NPCの後日譚

マジソン・リーは珍しく、心底満足そうで人当たりがよかった。
彼女の心の内で燻っていたが、安全な場所に居続ける為、封殺した微かな疑問。
「なぜ、これだけの技術を保持しながら、インスティチュートは地上の為に動かない？」
その疑問がすっきり解決されたからだ。
───新たな指導者にして前ファーザーの父、vault111の生存者によって。

彼はこれまでのインスティチュートの活動を改めて見直すことで、「このままではダメだ」と断言した。
「インスティチュートがこれまで行ったこと、その全てが連邦の人々の為だったとは言い難い。だから、ショーンの立場を受け継いだ俺自身が、インスティチュートの、ショーンの、そして俺自身の過ちを正す。今度は繰り返さない為に」、と。

壊滅したBOSのプリドゥエンの残骸に部隊を派遣し、回収可能な技術を回収、インスティチュートの保持する技術を拡大。その技術を用いて、グッドネイバーのメモリー・デンの記憶再生技術をアップグレードする、という提案を、Dr.アマリに持ちかけたのだ。
その代わり、アップグレードされた記憶再生技術でより高度な人造人間を作ることに同意する、という契約で。
その時彼の真意を聞いたアマリは、「『貴方の』インスティチュートを信じてみたい」と同意した。
アップグレードされた記憶再生技術は、新鮮な脳の一部が有れば多くの記憶を再生できる、というモノだった。
インスティチュートの地上を観測するシステムと人造人間部隊によって、不幸な死を遂げた人を回収、その記憶を取り出すことで被害者を模した人造人間を生み出し、より高度で正体がバレにくい人造人間の開発に成功したのだ。
既に地上の一部の民家で、本来帰らぬはずだった者が家に帰ることに成功している。正体も発覚しておらず、順調とのこと。
そう、こんな感じで、人々を助けてみたかったんだ。
今では、彼の研究を手伝うことが生き甲斐だ。生きることに必死だった時は、思いもしなかったことだ。
人当たりが良くなったマジソンは、以前よりも他の科学者に頼られることが多くなったという。(長文失礼しました)

連邦が少し平和になったことで、パワーアーマーは単なる兵器や強化外骨格の枠組みから外れようとしていた。

今、パワーアーマーは新たな需要を生み出していた……ファッションである。

戦後200年放置されてきたシャーシに、思い思いのデザインを描いたパーツを取り付け、勇ましいポーズでアピールするのだ。
ダイヤモンドシティや治安を取り戻したクインシーにて、ある男が審査員にして主催を務める「超クールなPAコンテスト」なるものが開催されていた。
その主催者とは……我らがアトムキャッツの偉大なる超クールなリーダー、ジークである。

エイダ

主人に頼み込んでプロテクトロンタイプの脚部を取り外しアサルトロンタイプへと変更、更に強力な武装で固め、メカニストの隠れ家の門を叩いた。
過ちを経て活動方針を改めたイザベルと共に、新生メカニストと相棒ロボットとして、連邦に残る不良ロボットの処理やラスト・デビルとの戦いに精を出している。

以前のプロテクトロン脚部やバックパックはサンクチュアリに大切に保管されている。戦いがひと段落ついたら、カーラにジャンク売りの極意を教わって商人になることも夢見ているようだ。

>>14 のスピンオフ妄想

キャプテン・アヴェリーが山から戻らず、新たな指導者を立てる必要に迫られたFar Harborの集落。後継者候補は既に定まっていた。
スモール・バーサ。年端も行かぬ孤児の身で「本土から来たアイツ」を僅か14.5キャップで雇いエコーレイク製材所を蘇らせた少女。成長するにつれその聡明さと胆力は誰の目にも明らかとなっていた。彼女こそが次のキャプテンに相応しいとハーバーマンの多くが認めていた。

彼女がキャプテンに名乗りを上げた大勢が賛同した時、予想外の声が上がった。
「キャプテンズ・ダンスはどうするんだ？」
声の主はアレン・リー。初老に差し掛かり偏屈さに磨きがかかったと評判である。
「キャプテンズ・ダンスを達成しない限りキャプテンになることは出来ない。違うか？」
アヴェリーという前例がある、と反駁しようとしたものはアレンの剣幕に圧されて口をつぐみ、かくしてバーサはキャプテンズ・ダンスに挑まざるをえなくなった。

明敏かつ機敏なバーサだが銃の腕前は人並みである。本当にキャプテンズ・ダンスを達成できるのか。失敗して蟹のエサとなるか、命からがら逃げだして島の命運を手放すことになるのか…。

沈痛な面持ちのバーサにオールド・ロングフェローが歩み寄り、そっとあるものを差し出した。
「とある人物から、お前が大人になり然るべき時が来たら手渡すようにと預かっていたものだ」
とある人物が誰なのかという疑問を一言も口にせず、彼女はロングフェローから受け取った「キロトン・ラジウムライフル」を握りしめた。

新たなる指導者、キャプテン・バーサが誕生した瞬間であった。

ケント・コノリー「やあシュラウド、元気かい？あの時は本当にありがとう。何度感謝してもし尽せないよ。ところで君の衣装を複製して新しい改造を加えて見たんだ。この前会った変な帽子を被った何でも屋のおじさんから教えてもらった技術を使って前よりずっとダメージを防いでくれるようになった筈だ。シルバーサブマシンガンの改良型も作ったよ。痛打って言うのかな？被弾した敵が出血しやすいように改造した。モールラット相手に試し撃ちをしたらびっくりする位すぐ死んだよ。使ってみたい？使ってみたいよね？ちょうどこの間イルマがハンコックから聞いた話なんだけど、トリガーマンに新しいボスが出現して勢いを盛り返しているらしいんだ。それで…つまりその…君が嫌じゃ無ければ、もういちどシルバーシュラウドとしての活躍を見せてくれないかな？」

ハンコック「あいつがその気になればKL-E-0を廃業させる武器屋になれそうだな。…で、『シュラウド』お前はどうする？」

青年期に差し掛かったシェン・カウォルスキーは自分の将来に悩んでいた。
給水場の利益は頭打ち。
それどころかあの将軍とかいう奴がマーケットの代金代わりに水をばら撒くせいで売り上げが半分に落ちた。
この仕事を続けていてもジリ貧だ。俺はこんな所で終わりたくない。
新しい事業を始めなければならないが一体何をすれば儲かるだろうか…。

起業のネタになる「何か」を求めて以前より少し治安の良くなった連邦各地を(武装と護衛は欠かさず)彷徨い歩くようになったシェン。

そんなある日、アイリッシュプライド造船所でシェンが見た光景…護衛が気味悪がって逃げ出し、マイアラークから身を守るために地雷原を築く彼の頭の中であるアイディアが閃いた。
そして造船所から遥か北にある、つい最近まで操業していたという工場に辿り着いた時に彼のアイディアは事業計画として形を成した。

「いける…ここでガッポリ稼いでアッパースタンドに家を建ててやるぜ！」

ルカウスキーズの缶詰工場が綴りを無理やり入れ替えて「カウォルスキーの缶詰工場」と名を変え、マイアラークの缶詰が連邦各地に流通するようになるのはこれより数年後の話である。

ハンコックの流れ卑怯すぎませんかねぇ…

ゲイジ
新たな総支配人の右腕として、為せるだけの悪は為し遂げたポーター・ゲイジ。
単なる協力関係ではあったが、総支配人として愉快な事をする111を楽しんでいるようで、自分達が手に入れたもの、そしていつの間にか芽生えた111との奇妙な友情に満足感を覚え、今日もヌカワールド・レイダースとして銃を手に取る。彼の生き様はこの先も変わらないだろうし、変えるつもりもないだろう。

オールド・ロングフェロー
若いハーバーマン達に狩猟を教えている。寄る年波には勝てないのか自分で獲物を仕留めることは減り、そろそろ引退してはと言われる事もあるが「家に籠っていると歳を取るのが早くなる」と言って猟に出続けている。

ケンおじさん
未だ老け込む気配は無く独特の語り口とともに健在である。その長寿ぶりに「人造人間なのでは？」との疑惑が一時浮上したが「万一そうだとしても彼なら無害だから大丈夫だろう」で立ち消えになった。
なお本人曰く「私が人造人間だったらとっくにアカディアのリーダーになっているだろうな。ヴァー！」とのことである。

ハンコック

111の活躍により変化が訪れ市長として支配勢力との交渉、対応に追われた疲れからか、
不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、
車の主、暴力団員谷岡が言い渡した示談の条件とは・・・。

ニック　忙しく探偵稼業を続けている。「俺もいよいよガタが来たらDIMAのように上から余計な機械をつけるしかないのか？」と密かに悩んでいる。

マクレディ　快復した息子を引き取り昔の仲間の目につかない場所でひっそりと暮らしている。息子が成人したら連邦の技術を使ってある町を豊かにするため一度キャピタルに戻る計画を立てている。

ストロング　未だ見つからぬ「人間の優しさのミルク」を求め続けているが、そんな彼の語る深遠な言葉に感銘を受けた弟子志望者達が現れ連邦初の「人間と交流があるスーパーミュータント勢力」となる。

コズワース　事実上主人の街となったサンクチュアリを執事として切り盛りしている。最近住民たちから「コズワース市長」と呼ばれるのを表向き咎めているが内心満更でもないらしい。

トラシュカン・カーラ

道端で偶然出会った青い服の英雄の登場から連邦のすべては変わり始めた。
少しずつ人々の心に余裕が生まれ、人前で子供を遊ばせる親も増えてきた。
「壊したら買うんだよ」
これを多くの子供に教えるのが生きがいの一つになった。
あちこちに小さいながらも工場が造られ始め、ゴミ箱から拾ったような品は今ではほとんど扱わなくなった。「トラシュカン」の名が忘れ去られるのも遠くはないだろう。