規制対象者の記録

Control Subjectで対照実験における対照群(対照患者)

例えば、ある薬「A」が効果を発揮するか否か検証したいとする
①患者を2グループ用意し
②片方にはAを、もう片方には見た目は同じだが何の効果もない偽薬を投与する
これが一般的な対照実験である。

あらゆるバイアスを排除するため、薬を投与する側にもどっちが本命の薬かは分からないようにするのが今時は常識とされる
この時、何ら効果が見られないハズの非介入側(今回の例だと偽薬側)を一般に『対照群』と呼称する

……お分かり頂けるだろうか？
本ホロテープは『対照群(対照患者)の』記録である。救いは無かったのだ
サンプル42-BA-7が偽薬であったのか、はたまたピーターズこそが……いや、両方とも……？　何にしろロクでもない話である

ピーターズ『サンプル42-BA-7の2回目の投与を数時間前に行ったが… 何も起こらない。効果がない？ 実験を終わるよう研究室に連絡を取ったが… 医者が必要だ。ちょっと待って、あれは何だ？ 私の… 歯か？ 歯が何本か抜けている。壊死が口腔中に広まっている。血清は毒性量に効果なし。実験中止の要請はしたが… 実験期間中は隔離されるようにと命令された。どうやらもう死ぬみたいだ。はっきりしてる、もうすぐだ。失敗だ。Dr.ロバーツ、もしよかったら、今から言うことを家族に伝えてほしい。ママ、パパ、愛してる。そう、これはボランティアだったんだ。バカでしょう？ でも信じてた。埋葬する価値のあるものなんて何も残ってないけど、ただわかってほしいのは…いや、いい、ちょっと感傷的すぎる… ちょっと考えさせて』

ピーターズ『エントリー6。研究助手ピーターズ。3月1日。被験者は限界値に無事達した。今測定を行う…6シーベルトを確認。発熱のせいで体液の喪失が著しい。IVの摂取量を増やした。前回の症状はすべてまだ続いている。腕、首、手の組織損傷が目立っており、肌が壊死して剥がれている。感染症を抑制するため局部用の抗生物質を経口摂取した。今から血清サンプル42-BA-7の血液への初回投与を行う。即効性はないようだ動物実験ではすぐに効果が…<咳き込む音>』

ピーターズ『エントリー3、研究助手ピーターズ、2077年2月26日。時間は… 1235時間だ。被験者の直接放射線被ばく線量は24時間で2シーベルトに達した。点滴静脈注射量は1リットルに増えた。被験者は前頭骨と頭頂葉の局部的な痛み、それに伴う強烈な吐き気を訴えており、12時間当たり… 平均3回～6回の嘔吐を繰り返している。固形物の経口摂取は不可能。ほかの症状は、手足の脱力感、歯茎からの出血、けいれん性腹痛や下痢など。下血があるということは、腸管出血の可能性もある。息切れもどうにかしなければ。今から自分の気持ちや考え方の変化について説明する。これまでの人生で今ほど嫌な気分だったことはない。この不快感にはもう耐えられないくらいだ。この実験を終了させてしまうこともよく考える。しかしわかってる… わかってる… 6シーベルトに達するまであと数日の話だ。そうすれば血清を投与できる。それから契約を更新すると、血清は市場へ出回り、その血清が人々を助ける。みんなの暮らしが変わるんだ。私は、だ… 大丈夫だ。大丈夫。いつも同じことばかり考えてる。ほかに報告すべき進展はない。』

捨てられた家で拾えるホロテープ。全3種類
『Control Subject's Recording』なので、『制御実験の記録』あたりが妥当か？