家出人のホロテープ

大人になる、子供ができる、その責任といったことの教育は、国家の次代を担う者を作ることでもあり非常に重要であるはずだが、私の知る限り日本では公教育においてあまり時間が割かれておらず、理解度や精神的成熟度を生徒ごとに詳しく分析されてもいない。また、家庭においてこれらがどのように教育されているかについてもあまり調査されていない。アメリカでどうなのかは知らないが、世界が乱れ、戦争へと向かう中で水準が維持できていたかは疑わしい。
その一方で肉体は教育など受けていなくとも着実に大人へと近づいていくのである。
この少女の親は怒り、泣いているが、彼らは自分の責任を果たせたのだろうか。果たせていなかったことにこんな形で気づき、自らに対して怒り、泣いているのではないだろうか。
生活基盤がどのような形をとるかはわからないがこの少女は子供を産み育てていく中で、強靭な母親に成長できたはずだった。その機会を奪われたのだ。

悲壮な語り口には思わず同情を誘われるが、冷静になってみると無責任さが招いた自業自得である事に気が付く。
録音された音声もお腹の子供への罪悪感や責任感といったものではなく、一人でやっていかなければいけない不安や恐怖といった“我が身”の心配である。
自意識を持つ前に核の炎に焼かれてしまった物言えぬ幼子が何よりの被害者である。

せめて天国で笑っている事を祈る

強権を握る父親と夫の言いなりな母親という典型的な構図である。

棚にはテディベアが置いてある。

言うまでもないが、日付は最終戦争の前日である。

ホロテープの内容から恐らくこの家出少女とジョンの間に子供が出来てそれで父親が激怒して家から追い出したとも推測できる
結局笑える日は永久に来なかったという切ない結末で終わる

泣けてくる

レンジャーの小屋のダッフルバッグに入っているホロテープ

家出少女
2077年10月22日
さっきついに話したけど、だめだった。最悪だった
パパは、恥を知れとか家から出て行けって叫んでた
ママはただ泣いているだけだったけど、なぜかそれが一番傷ついた
ママは一言も喋らなかった、荷造りしているときさえも
ジョンのところには行けない・・・まだ何も知らないから
ずっと言わないでいたほうがいいかも
キャビンがなかったら寝る場所さえもないところだった。ちょっといろいろ考えないと
最後にここに来たときは、まだこのキャビンで踊って遊んでたような小さな女の子だったのに
今は本当に怯えている
またいつか笑える日が来るかな？