庭から出て行けバンドル

「庭から出ていけ」（Get off my Lawn）は、アメリカでは「気難しそうな爺さん」というステレオタイプと組み合わせて使われることの多いフレーズである。

19世紀末頃まで、人を雇い定期的な整備を行う必要のある庭というのは、裕福な邸宅にのみ付属するものであった。それ以外の人々が庭を持つようになるのは、機械式芝刈り機が普及してからのことである。
第二次世界大戦後、経済の目覚ましい発展に伴い、田舎から都市部に移り、庭付き一戸建ての住宅を購入する人々が徐々に現れてきた。時に家を城と例え、私有財産権を特に尊ぶアメリカの人々にとって、この庭というものは新たに得られた豊かさ、自らが掴んだアメリカンドリームの象徴であった。
そして1960年代から1970年代、そうした人々が定年退職を迎える頃、庭付きの家を当たり前のものとして成長した戦後世代との衝突が起こった。つまり、若者にとっては"たかが庭"に"ちょっと入っただけ"だが、庭をアメリカンドリームの象徴と信じる老人たちにとっては私有財産権の明白な侵害と映ったわけである。そこで老人たちは、恐らくは古めかしいライフルかショットガンでも持ち出してきて、こう叫ぶ。「ガキ共、わしの庭から出ていけ！」（You kids get off my lawn!）

現在ではかつて言われる側だった人々もまた老人になっているわけだが、映画やドラマ、コメディショーなどでしばしば使われたこの言葉は、「気難しそうな爺さん」というイメージと共に未だに生き続けている。